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新成人が解き放たれる気分を、疑似体験してみる。


昨日。成人式に出席したあと、ある商業施設に移動した娘を車で迎えに行った。
少し早く着いたので、車中でしばらく待機。
私の車の周囲を、見るからに新成人という面々が行きかう。

思い思いに自身を着飾り、皆、楽しげだ。

そんな様子をぼんやり眺めていたら、
視界の正面で、紋付姿の男の子が煙草を取り出してそれに火をつけ、
空いている手を腰に手を当てるような趣で、

「スッパ~~」 と煙を高らかに吐き出した。

              ◇

私は、「やりたかったんだな。あれ」 そうつぶやくと、誰かが、

「やりたかったのよ。あれ」 と言った。

              ◇

禁じられていたことが、解かれる。
きっと、素晴らしいことなのだろう。

私は18歳から働いていたので、20歳のころには、煙草とお酒は普通に呑んでいたし、
咎められた記憶もなく、成人式には浜松の関連会社に出向していた都合、
片田舎の独身寮の一室で、

「二十歳だってな。ま、呑めや」 「どうも」

と、日常と同じ風に、先輩とスルメをあてにコップ酒を呑んだだけなので、
残念ながら、彼の気持ちがあまりわからない。
しかし。「気持ちがわからない」 のは癪にさわるので、この機会に疑似体験しようと思う。
まずは、何かを禁じられてコソコソする必要があろう。

                ◇

昨今私は。良縁あって分不相応のカメラを入手でき、嬉しげに写真を撮る日々だが、
この気分のまま18、19歳にさかのぼり、さらには禁じられてみよう。

「お酒と煙草とカメラは20歳になってから。守らぬ者は厳しく罰せられます」

とんでもない法律が出来たものだが、きっとこうだ。

「コソコソ撮る」

想像しても身を切られるような事態である。気軽に首からカメラをぶら下げては駄目だ。
カメラの専用バックなんてのもNG。
リュックとかに隠し入れ、ミカンや、グレープフルーツを上から詰めるしかない。
しかし、きっと。警察から委託を受けた天下りの検閲官に、抜き打ちの検査をやられるのだ。

検閲官 : 「その中身はなんだね?」
私   : 「あ……。びょ、病弱の母に届ける、く、果物です」
検閲官 : 「よし。中身を全部だしたまえ」
私   : 「いや、ちょっと、は、母が危篤で……、急がないと」
検閲官 : 「この男を、連行しろ!」
        
                 ◇

2年後、成人式当日。

式が終わり、私は同級生に誘われるまま、ある商業施設に向かった。
首からは……。
今朝、国から返却が許され、戻ってきたばかりのカメラがぶら下がっている。

そう。今日、私は新成人。自由にカメラを所持し、撮って良い。
ふと。駐車場の中ほどで立ち止まり、これまでの暗い日々を振り返る。
愛おしい。カメラをそっと撫でた。

「早く来いよ」 友人が私を急かせた。彼もカメラを下げている。
彼も今日の日を心待ちにしていた同志だ。

私は急に誇らしい気分、そして無性に撮りたくなり、高らかにカメラを構え、闇雲に連写した。

片方の手を腰に当てて……。

「カシャ カシャ カシャ カシャ カシャ……」

             ◇

かなり。彼の気持ちが理解できたと思ふ。












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