ある画びょうとの想い出。




小学生、高学年の一時期。
私は、画びょうを駒のようにまわして遊ぶ、 「画びょう回し」
に打ち込み、学業を犠牲にしながら、かなりの修練を積んだ。

先ほど、ひょんなことからそのことを想い出して懐かしんでいる。

     ◇

当時私は。
学校中の画びょうの回り具合をテストしたが、
ついにある日。
一本の完璧なバランスを有する画びょうと出会った。

それは、優雅に着地するやいなや 「ピタリ」 と、静止し、
最期の一回転まで体躯の軸をぶらすことがなかった。
そして、いよいよその姿勢を保てないことを察すると、
高貴な女性がベッドに入るかのごとく、
わずかなけだるさを忍ばせてゆったりと床に横たわった。

もちろん。
これは現在の観点からの描写であり、
あの日にどう感じていたかは知らない。

     ◇

画びょうは、そのエレガントな見事な性能を、
生まれながらにして備えているという態であったが、
それを見た心の澄んでいない者などは、

「刺さってるんやろ?」

などと、まったくもって程度の低いことを言ったものだ。
ま。たしかに、静止画を見ているようではあったので致し方ないね。

     ◇

私は、その画びょうをどのくらいの期間保有し、
何回くらい、そのたぐいまれなる性能を堪能したのだろうか?

そのあたりのことは何ら記憶がなく、
もはやそれを知りえる手がかりもないが、
その最期の瞬間の映像だけは、
かすみの向こうに残っている。

主に、教室の机の上で回していたと記憶するが、
その時は手元が狂ったのか、
私はその画びょうを床に落とした。

そして。

運悪く、クラスメイトの女の子が通りがかり、
その画びょうを踏んでしまったのである。

「あ!」

そのクラスメイトが誰だったのか?
彼女の足は大丈夫だったのか?

そのあたりは何ら覚えていない。

ただ。

完璧なサークルから、
ジャスト90度で可憐に突き出ていたピンの角度が。

ピンの角度が。

角度が。。。

だめだ、書けない。

     ◇

画びょう。

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