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一年。




あの日から一年。

ちょっと、どうかというくらいに沈んだ時をへて、
あの焼け焦げるような痛みの中心核とは少し距離が出来、
今はその衛星軌道上を静かにまわっている。といった態である。

時折それを見上げる。つまり、
てんを想う日もあるが、やたらと心をかき乱すことも随分と減った。

     ◇

てんが病みはじめた当初。
私が玄関で寝てケアをしていたが、
じきに、いくつかの事情が重なりあって、
妻と娘が交代で看ることとなり、
私はてんと接する時間が激減した。

病気らしい病気もせずに暮らしてきた奴だっただけに、
急にふさぎ込む様子を見るのはつらかったが、
みれなくなるのもまた辛かった。
いや。目をそむけられる時間ができて、
ほっとしていた部分もあろう。

     ◇

てんの急変により、慣れぬ看護に悩み、疲れ、
それに呼応するように吹いて出た、色々な変化や決断に迫られ、
なかなかに厳しい時を過ごした。

ともあれ。結果的にみれば、
てんは14年間、あきれるほどよく食い、元気いっぱいに走り回り、
多くの笑顔を周囲に与え、
そして、ほんの 1カ月ほどだけ荷造りをするように旅立つ準備をし、
そう苦しまずに、実に綺麗にこの世を去った。

     ◇

あの頃。
私は少し体調を崩し、好きな酒を減らしていたのだが、
ちょっとしたことがあって、あの夜は大いに呑んだ。
呑む動機としては、ちと良からぬことだったが、
なぜか機嫌よく酔い,その勢いなのか、
食事をあれこれ制限していた てんをリビングに入れ、
豚を鍋でしゃぶしゃぶして自分の箸で食べさせた。

基本。てんは玄関から上にはあげなかったので、
もちろんそんな振る舞いをしたのは初めてである。

てんは病み始めてからずっと食欲がなさげだったが、
あの豚は旨そうに食っていたな。

     ◇

そして。妻と娘に任せきりにしていた夜の付添いを、
なぜかあの夜は私がやると言い張り、
酔いに任せてそのまま一緒に寝た。

まさか。
まさか。ひと眠りした後に、あの別れが待っていようとは。

     ◇

そもそも。
私が自然治癒というものを、そして、その側らにある、
神様のなせる業というものに出会った頃にてんはやって来た。

そして。てんは数多くのヒントをくれ、体現してくれた。

いま。目の前で起きたことが、
見間違いではないかと思ったことは一度や二度ではない。

     ◇

ちなみに。
12月12日は、あの店に入居した記念日だったのだが、
てんは12月11日に我々の元を去った。
転居した今となっては何とも意味深いタイミングである。

それらは。
つくり出してしまった痛恨の顛末だったのか、
あらかじめ定められていた道なのかは判然としない。

断言できるのは。
てんの亡がらを風呂で洗うと実に美しく、
いつものごとくモフモフだったこと。

誰かが写真を撮っておこうかと言ったくらいである。

夜が明け。
揺すったら起きそうな てんを山に還すのは、
また違った痛みが生じたものだが、
ああして良かったと思う。

なぜなら、いま想い起すのは、颯爽と走るてんの姿であり、

てんの残像はどこまでもさわやかな風となって吹いているから。

何度でも言おう。
てん、ありがとう。

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